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映画「マレーナ」の感想と考察|美しい音楽とロケ地、モニカベルッチの女優魂

映画「マレーナ」は2001年6月9日に日本で公開された、モニカ・ベルッチの代表作の一つです。

マレーナの美しさがもたらす周囲への複雑な影響と、人々の嫉妬や憧れの感情をリアルに表現していると同時に、モニカベルッチの美しさと演技に魅了される作品でもあります。

この記事では映画「マレーナ」の個人的な感想や考察について書いていきたいと思います。

映画「マレーナ」 あらすじ

〈あらすじ〉
1940年のシチリア島を背景に、12歳半の少年レナートは、出征中の夫を持つ美しいマレーナに心を奪われる。彼女の魅力的な外見と洗練されたファッションセンスは、町の人々の注目を集め、男性たちは彼女を称賛し、女性たちは無根拠な噂で彼女を非難している。

シチリアの美しいロケ地

舞台はシチリア南東の端にある世界遺産のバロックの田舎町。

自然豊かで美しい町並みが魅力的で、海に囲まれていて太陽燦々気持ちの良い町というイメージです。

ハリウッド映画のストーリーパターンが刷り込まれすぎていて、この手の映画の物語は、少年が奮闘して将来的に彼女のハートを射止めるのかと思っていましたが、それとはまったく異なるストーリーでした。

この映画「マレーナは」一言でいうと、時代に、時代に翻弄された女性と、それを見続けた少年の話、だと思います。

シチリアのある街で、マレーナは噂のタネだで、男たちからは熱い視線を送られ、女たちからは嫉妬や妬みを受けている。

少年レナートはそんなマレーナを一目見て恋に落ちてしまいます。

耳に残る映画音楽

『マレーナ(Malena)』で流れるメインテーマもこの映画のスパイスに欠かせません。

音楽を担当したのはエンニオ・モリコーネというイタリアの作曲家で、『ニュー・シネマ・パラダイス』の音楽を担当していたことでも知られています。

少年レナートはがマレーナに対しできることは限られていて、マレーナを物陰からこっそりと覗いたり、彼女の陰口を言っている人のバッグに小便をかけたり、そんなことぐらいしかできません。

レナートは終始、ただただマレーナを見ているだけです。

マレーナは美しくて親孝行な娘でもあり、気高く生きる事を意識しているようにも見えますが、そんな彼女に周りの人たち、とくに街の女たちは冷たい態度です。

そんな物語の内容とこのメインテーマ『マレーナ(Malena)』が非常によくマッチしていて、気づけば映画の雰囲気に引き込まれてしまいます。

映画「マレーナ」 あの衝撃的なシーンの感想

天涯孤独になったマレーナ

そんななか、マレーナの夫が亡くなったという報告があり、悲しみに暮れるマレーナでしたが、その後に父親までなくなってしまい、マレーナは一気に天涯孤独となってしまうのです。

少年はその間も、マレーナに冷たくしている人間に苛立ち、マレーナに同情したり、少年なりに怒りや悲しみを感じながらも彼女を見続けています。

ある日、マレーナは髪を切り、髪色を変え、ある仕事をせざるを得なくなります…夫が亡くなったこともあり、生活などの事情でそうしたことで生計を立てることを決意しなければなりませんでした。

それがマレーナにとって本意ではないことを少年レナートだけが知っていて、レナートのどうしようもない気持ちが伝わってきます。

モニカベルッチの女優魂

世界全体に起こったあることがきっかけで、街の女性たちは、これまで溜めていたマレーナへの嫉妬や怒りなどの複雑な気持ちを、ついにマレーナへぶつけることになります。

おそらくこのあたりのシーンがこの映画の山場ともいえる描写で、マレーナに対する怒りがあらわになった女性たちの形相や行為はとても恐ろしく描かれています。

少年レナートはやはり、その時にも何もできずに見ているだけなので「もうなんでもいいから助けてやってくれ」と思ってしまいます。

マレーナと街の女性たちのこのシーン描写はとても印象深いです。

周りで見ている男たちも助けることはせず、さらなる女性たちからの糾弾に耐えられず、マレーナは叫んでその場をふらふらと立ち去っていきます。

あのマレーナがこんなことに…と目を覆いたくなるような気持ちと同時に、モニカベルッチの演技に目が離せない状況になりました。

映画「マレーナ」 マレーナ夫妻帰還後の考察

何事もなかったかのような街

その一年後、マレーナは夫と2人、シチリアのその街に帰ってきます。

マレーナの夫が亡くなったという報告は誤報だったようで、マレーナ夫妻を見た街の人たちは一瞬時が止まったかのように静まり返ります。

マレーナと夫はそのままゆっくりと前を向いて歩いているのですが、マレーナの表情が何かと戦っているような感じで「いったいどういう心境なんだろう」と、考えさせられます。

そのあと、海辺の近くの人が多く集まる市場でマレーナは買い物をしているのですが、周りの目は冷ややかでところどころで陰口が聞こえます。

ほんの一言で変わる

一年前マレーナが街を出るきっかけになった女性の一人が、マレーナの後ろでひそひそと話をしていたかと思えばふと、「おはようスコーディアさん」とマレーナに向かって声を掛けます。

マレーナはゆっくりと振り返り、また、ゆっくり周りの人間を見まわした後「おはよう」と微笑します。

挨拶を返されたその女性は笑顔になり、その場の空気が一変するのが分かります。

それを見て周りの人たちも一斉にしてマレーナにあいさつを返し、またいつもと変わらないように街に活気が戻ります。

マレーナはこのときやっと街の人に受け入れられたのです。

おそらく街の女性たちもマレーナに対しての罪の意識が残っていたのではないでしょうか。

このシーンでマレーナのこれまでの苦悩や苦い経験がすべて報われたわけではありませんが、これからの街での生活に明るい兆しが見え始めた瞬間でした。

映画「マレーナ」 レナートの愛、ラストの詩

大人になると決意した少年

海沿いの砂浜を歩きながら帰っているマレーナは、手提げ袋を持ち替えたときにさっき市場で買ったオレンジを砂浜に落としてしまいます。

そこへ少年レナートが駆けつけ、「僕が拾います」と言ってマレーナが落としたオレンジを拾うのを手伝ってあげます。

その時に少年レナートは熱い視線でマレーナを見つめて、どさくさにまぎれて、少しだけマレーナの手に触れます。

マレーナはそれに気づくこともなく「助かったわ」と言ってその場を後にします。

少年レナートはこのシーンで初めて愛するマレーナとまともに会話をしたことになるのですが、これが彼女との最初で最後の会話になります…

去り際の彼女に向かって「お幸せに マレーナさん」と伝えると、彼女は微笑んで再び砂浜を歩き始めます。

少年レナートは知らず知らずのうちに成長していて、マレーナを欲望の対象ではなく一人の女性として、純粋に彼女の幸せを願えるようになっていました。

ラストの余韻

大人になったレナートの語りでこの映画の最後は締めくくられますが、詩のようなとてもいいセリフです。

何とも言えない余韻を残して、この映画は終了します。

年を重ね平凡な人生を送るなか
”忘れないで”という女は大勢いたが
皆忘れてしまった
でも彼女は覚えてる
彼女のことは忘れられない
マレーナ

まとめ

映画「マレーナ」の感想と考察|美しい音楽とロケ地、モニカベルッチの女優魂、について書かせていただきました。

一年後にマレーナが戻ってきてからのラストまでの描写が特にそうですが、観る人によって感じる事が様々異なりそうな作品です。

美しさとは何か、そしてそれが人々の運命にどのような影響を与えるのかを考えさせられる映画だと感じました。

興味のある方は是非、映画「マレーナ」を観てみてください。

ご覧いただきましてありがとうございました。

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